私たちがスマホを使って通話したり、WiFiを使わずにインターネットに接続する際は、一番近くの基地局から電波を送受信する事で不自由なくスマホを使う事ができます。
ですが端末を使いながら移動して、その基地局からの距離が遠くなってしまうと、もちろん電波がだんだんと届かなくなりますよね。
また、一番近くにあるAという基地局から移動して、Bという基地局の方が自分の居場所が近くなった場合、Aの基地局の電波のままだと通信ができなくなるので、Bの基地局に接続を切り替える必要があります。
このように接続されている基地局から距離が離れて、次の基地局へ自動で切り替える技術を「ハンドオーバー」といいます。
出典:平成23年度全国発明表彰「発明賞」を受賞/FUJITSU
このハンドオーバーの技術は、2003年富士通によって「CDMA移動通信における基地局切替え方法の発明(特許第3479935号)」として開発され、特許も取得し今では世界中で活躍しています。
高速移動中のハンドオーバーが課題
特に車や新幹線に乗って高速で移動しながら通信を行う場合は、使用している端末とつながっている「基地局」をA→B→C→・・・といった形で次々と切り替えなければなりません。
徒歩や自転車程度の速度であれば問題なく基地局から端末を追う事が可能です。
しかし高速道路を走行中の自動車や新幹線程の超高速になると、端末をとらえるのも難しく、短時間で何度もハンドオーバーを行う必要があるので移動速度が上がれば上がるほどハンドオーバーは技術的に難しくなってしまいます。
このハンドオーバーがスムーズに行えないと通話や通信が途中で途切れたり、通信の乱れの原因となるので、5Gの実用化の課題の一つとされています。
5Gでは更にハンドオーバーが困難?
5Gで利用されている3.7GHz/4.5GHzや28GHz帯の周波数はビームフォーミング技術によって電波の幅が狭くなってしまうため、高速で移動している端末を正確に捉える事が難しく、ハンドオーバーを行う事は困難といわれていました。
しかし今では各企業が次々と実験を重ね、高速で移動しながらハンドオーバーを活用し、5Gの通信を継続して使用できる環境が整ってきています。
KDDI
KDDIでは2017年2月の段階で既に一般道だけでなく高速道路でも5Gの28GHz帯の周波数でハンドオーバーの実験に成功しています。
この実験成功は当時国内では初でした。
参考:国内初、28GHz帯におけるハンドオーバーの実験成功について/KDDI
ドコモ
KDDIが5Gの28GHz帯の周波数でハンドオーバーの実験を成功させた翌年2018年4月には、ドコモが時速305kmという超高速で走行する自動車と5G基地局との間での28GHzの周波数帯による無線通信を世界で初めて成功させます。
また時速290kmで移動する中でのハンドオーバーにも成功しています。
どこの企業も負けずと自社の技術に磨きをかけて5Gのハンドオーバーの実用化を目指しています。
参考:(お知らせ)世界初、時速300kmの超高速移動環境で5G無線通信実験に成功/ドコモ
ハンドオーバーと車の自動運転
5Gのインフラ整備が整うことで期待されている技術の一つに、車の自動運転化があります。
しかし、この自動運転こそハンドオーバー技術は非常に重要な課題となります。
自動運転中に通信が途切れてしまうと、大事故につながりかねません。
もちろんそのような事も含めて、充分に検証しながら自動車メーカーも開発を進めているのですが、今後のハンドオーバー技術の更なる進歩によって自動運転の技術の早期実現に期待したいところですね。